2017.11.16.Thu

飯田文香展のレヴュー

紋谷幹男が画廊巡りの印象を綴っていきます。

人物や背景が緻密に描き込まれた日本画ですが、
実際の状況を再現したのではなく、
画家の独特な感性によって再構築され、
画面上だけの世界が生まれています。

大画面上のめくめく多様な出来事を、
一つ一つ追ってゆく、
贅沢な鑑賞体験ができます。

写実的な実際の事物の関係の中に、
装飾的な文様が大胆に挿入され、
日常の風景は、妖しい非日常性を帯び始め、
空間の幻想性が意識されます。

主体や背景といったヒエラルキーは意図的に無視され、
構成要素全ては等価に扱われ、
結果、美しく、理解が可能な混沌という
刺激的な事態が起こります。

特定の事物そのものではなく、
私たちが日常と呼んでいるこの世界に共に在るであろう
深淵を知らしめてくれる。
そんな印象でした。

2017.11.14.Tue

金城徹展 鉄錆の魅力

21.JPG

金城さんは沖縄からのメッセージを鉄錆に託して、その痕跡を作品にしています。
素敵な作品です。

2017.10.21.Sat

伊藤清子展

アートスペース羅針盤(中央区京橋3-5)では、伊藤清子展。

徹底して猫を描いていますが、
〜と猫や、〜をする猫、猫のいる〜ではなく、
単色の背景に、
猫の顔をそのものをモチーフにしています。
ファインアートとしては珍しい視点です。

猫の顔は比較的フラットで、
それを真正面から捉えていますから、
大きな目が重要なポイントになります。

謎めいた中にも、
「猫も自己主張する」的な、
説得力のあるイメージが作り出されています。
人間関係ではあり得ない、
他者との無条件な共鳴は、
他者への無条件な共鳴への期待は、
浄化された、おとぎの世界のようだ。
そんな印象でした。

2017.10.13.Fri

初心に帰る

羅針盤が1999年の3月にオープンし、3月12日に父の兄にあたる隆善伯父さまからお便りをいただき、時々読み返して初心に帰っています。
伯父さまは既に他界していますが、小学校の先生でした。

各地から春の息吹の便りがテレビの画面にいろどりを添えてくれています。
そこへ、すばらしい便りが飛び込んできました。
それは、「アートスペース羅針盤」の開廊の案内状です。
わが姪で美の世界にかかわる人が出ようとは全く夢みたいな話です。
古代から世界中の人類の先祖たちは、「真」「善」「美」を追求してきました。
私の父は僧侶でしたから、善の世界を歩んできました。一族に名前だけ善をいただいている者が何人もいます。
真理の追究は学問の世界です。
古代エジプトのピラミッドの中に足跡がたくさん残されています。
ルネッサンスに見られる美の世界への人々のあこがれと多くの遺産は心の糧として如何に美を求めたかを示していますね。
このごろ週刊アートギャラリーが発刊されています。7号まで出ましたので、その度に書店に出向いて求めています。「巨匠達の作風に迫る」と6号のピカソのところに出ています。
美術史はよく知りませんでしたから、少し勉強してみようと思ったからです。
もし、近かったら現代の画家の作品を見に行きたいところです。人々の暮らしの中に潤いと安らぎを与えるものに美術の世界は大きな働きがあります。リストラと高物価の中であくせくしている現代人の心の中に必要なアートのニーズは今後益々大きくなるでしょう。
西洋でも中国でも日本でも権力の世界はわずかしか残ってはいませんが心の奥に深く入り込む宗教や藝術の世界は後世に残っています。
将来性のある仕事を選んだこゆちゃんのけい眼に敬服します。
古人のことばに「天の時」「地の利」「人の和」とあります。
前の二つはうまくできているので残された「人の和」を大きく育ててあせらず、じっくり取り組んでください。
信用が第一歩です。目先の利に走らず、客の立場に立ったサービスと誠実さで経営していけばきっと成長すると思います。育てたものを社会に還元するよう画廊から更に進んで美術館目指してがんばって下さい。


2017.10.13.Fri

猫ギャラリー

    〜猫ギャラリー始まる〜

2017.10.11、京橋三丁目にある「アートスペース羅針盤」で開催されている「伊藤清子展(会期 : 10/9〜10/14)」を拝見しました。


いったい何枚の絵が展示されているのか数えるのも大変なくらい展示されている。世の中には、猫カフェというのがあるが、ここに描かれた猫たちは彼らがモデルであることが多いという。素晴らしいのはその表情の豊かさである。作品のなかには「大首絵シリーズ」というのもあるのだが、そのシリーズに限らず、どの作品も猫顔が「ドアップ」で「どや顔」である。その猫たちの視線が360度で押し寄せてくるから堪らない。いやはや凄い迫力で、猫好きでなくてもその存在感に畏れ入るだろう。特に、セルフポートレートの次の添付写真2枚(背景が赤と黄色の大型作品)は秀逸である。猫というのは犬と違って小動物であるせいか、全身像で現されることが多いが、この2枚の顔面ど迫力は空前絶後のデュオ・ポートレートである。存在感という言葉は彼らのためにあるといっても過言ではない。おまけに「可愛い」。我が家にも猫はいるのだが、主人を無視した「唯我独尊」の行動が、猫と飼い主の距離感としては好きだと言う方も多いと思うが、この展示会場の猫たちは距離間なんてなんのその、これでもかとすり寄ってくる。絵画という世界のなかでしか味わえない夢のような"cat world"である。なお、猫ちゃんのことばかり書きましたが、作品のモデルには添付写真でご覧いただけるように「ワンちゃん」や「ウサギさん」「アヒルさん」等も登場します。
 追伸、オーナーの岡崎さんに聴いたところでは、千駄ヶ谷の佐藤美術館で「〜現代作家70名が描く、つくる〜吾輩の猫展(会期 : 11/7〜12/24)」があるそうで、勿論「伊藤清子」さんも出品するそうです。

2017.10. 9.Mon

展覧会の印象記  紋谷 幹男(もんや みきお)さんから

阿久津真那の展示エリア。

野生の大型動物が疾走する様子を、
真横から、大画面に描いています。
色は使わず、白から黒の諧調だけで表現しています。
さらに、地面や背景も描かれませんので、
走るという「動き」の純化のようです。

画家の自然の創造物への畏敬の念、感嘆が、
重みある空気感となって画面を包み込んでいます。
動物の疾走と呼応するようにたなびく空気の動き、
振動までが表現されている。
そんな印象でした。

2017.10. 9.Mon

展覧会の印象記  紋谷 幹男(もんや みきお)さんから

藤野翔子の展示エリア。

日本画による寒色系色彩の抽象表現。
全体に、流れ、凍結など、
時の移ろいと、水の振る舞いが底流に感じられます。

独特な感性です。

未来、あるいは過去といったものが、
確かにに存在しているはずという
イメージが静かに広がっていきます。

緻密な描写で、
何かが生きているように描かれ、
不思議な温かさが感じられる。
そんな印象でした。

2017.8.26.Sat

どちらにいる

IMG_0834.JPG

2人の作家は、同じ多摩美術大学の大学院を修了した同級生である。
昨年は、修了個展を行った2人だが、今回は、コンセプトをたててルールを決めた展示となっていて、興味深い。
修了展でむくりこくりという恐ろしいものの象徴として、クジラを描いていた山嵜さんが今回は、風景や波、クジラと空を重層的に、しかもグラフィカルな手法で描いてきた。
様々な新素材を取り入れた実験的な作風もおもしろい。
折笠さんのペインティングは、リズム感や一触即発の危機感や生々しさを感じるライブ感覚が魅力となっている。
波打ち際に打ち上げられた人体の一部が空間に浮かび上がる効果も、背景の薄墨によっていきている。
先月、父が亡くなり、肉体が焼かれ、骨になり、父の魂はどこにいってしまったのかと不思議になった。
昔のアルバムに小さな赤ちゃんを抱く父の若い姿。
そして、私が生まれる前の父の写真を見ながら、私の知らない父がいるという不思議。
父の人生に思いを馳せるたびに、寄せては繰り返す波のように悲しみと慰めの感覚に襲われているが、
そういう私の今の心境に寄り添うような2人の絵。
私の今の素直な感情を引き出せる2人の絵。
アートを鑑賞する醍醐味は、自分の今の気持ちに寄り添って、悲しみや慰め、喜びや希望を感じる感覚を追体験させてくれることだと憶う。


2017.7.18.Tue

阿部 観水 画廊めぐりノートから

不思議な絵です。
菱田春草の「落葉」を思わせる、
背景描写を省き、苔むした樹木の幹と地表をだけ描いた大作には、
意外なことに魚が泳いでいます。
「松にシーラカンス図」においては、
そんな非現実的な関係性は、更に確信的になっています。
恐らく、「奇を衒う」とは異なる次元の装飾性と思われます。

おたがいに自律した存在を同一画面に置くことで、
無関係であるが故の関係性が生まれます。
その鑑賞者の内部に生じるざわめきは、
様々な形式が出そろった現代美術において、
意外な風穴になりえる。
そんな印象でした。

2017.7.18.Tue

松岡 学 画廊めぐりノートから

モチーフがとても魅力的です。
長年の風雪にさらされて随分とくたびれていますが、
何とか現役として存在している建物。
工場建築のような機能優先の無機的な建造物ではなく、
住まいのような温かみある郷愁もなく、
廃墟建築のような、妖しい美しさもなく、
再生より解体を待つ、ほったらかしの建物。

画家はそんな建物、そんな状態になるに至った時間や営みに
畏敬の念を感じたようです。
美しくもない忘れられた建物の在り様が、
気持ちを込めた筆遣いの一本一本によって、
稀有な存在に変容する。
そんな印象でした。

 


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